教員ブログ

「走る」時、両足が地面から離れるか

  • 子ども学科
  • 2017年7月26日

「走る」と「歩く」の違いは、両足が同時に地面から離れるかどうかだと言われることがあります。確かに、「走る」の意味を、「とびはねるようにして足を速く動かして前に進む」(現代新国語辞典)のように説明することが多い。しかし、私(山梨県東部出身)が使う「走る」は「両足が同時に地面から離れ」なくてもよい。「足をひきずりながら走った」と言うことができるのです。どうしてこういう食い違いが起こるのか。それは、私の語彙には「跳ぶ」があり、「呼ばれたので、跳んで来た」のように使います。「足をひきずりながら跳んで来た」とは言えない。つまり、私の「走る」(公的場面で使用)は「素早く移動する」、「跳ぶ」(日常的に使用)は「足で地面を蹴ってはねるようにして素早く移動する」(他に、「足で地面を蹴って空中にはね上がる」の意味もあります)なのです。これは、おそらく近世頃の用法を保っているもので、共通語の「走る」は「跳ぶ」の意味を奪った新しい用法だと考えられます。共通語の「跳ぶ」には「足で地面を蹴って空中にはね上がる」の意味はあるのに、「足で地面を蹴ってはねるようにして素早く移動する」という意味はないからです。

この「走る」と「跳ぶ」の意味関係は、「歩く」と「歩む」に似ています。「歩く」は「あり・行く」の複合形で(複合形であることはアクセントの特殊性から分かります)、中古の意味は〈あちこち移動する。(馬や舟で移動することもある)〉でした。「歩む」の方は、〈足を使って一歩一歩進む〉でした。現代語の「歩く」は「歩む」の意味を奪ったのです。

(子ども学科 久島茂)

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