宮本武蔵という生き方 | 静岡福祉大学

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宮本武蔵という生き方

教員ブログ

高校時代を振り返ると、吉川英治著「宮本武蔵」を何度も読み返したことを覚えています。その思想は、その後の自分の人格形成に大きな影響を与えました。心の奥底に刻み込まれた価値観は、今でも無意識に要所要所で現れてきます。

ところで先日、九州熊本を訪問する機会がありました。熊本と言えば細川藩のお膝元、宮本武蔵が長い浪人生活の末、59歳にしてはじめて、念願の仕官を手に入れた地です。そして武蔵は、この地の霊巌洞という洞穴に籠り、「五輪の書」を書きあげたのです。「五輪の書」とは宮本武蔵が執筆した兵法の基本書の一つであり、現在でも実践的な人生訓として世界中で読み継がれています。

熊本に来たのだから、少しでも武蔵に近づきたいという想いに駆られ、この霊巌洞を訪れました。山深い緑を抜けると、ひっそりとした大きな洞穴が現れてきます。早速洞穴に入り、武蔵も眺めたであろう眼下の山林に視線を向けました。静寂の中、太陽の光や新緑がとても眩しく、洞穴の内側と外側の境界線を体感できる空間で、物事を深く思慮するうえで最適な場所です。ここで武蔵は余生を送り、1年足らずで「五輪の書」を書き上げ、寿命を迎えることとなります。

命を懸けた武道に人生を捧げ、二天一流の兵法を極め、日本一の剣豪として天下に名声を上げ、しかし夢の仕官が叶うも59歳という苦難に満ちた人生です。この場所で武蔵は自分の生涯を振り返り、そして後世に伝えるべき魂を、一文字一文字、文章に刻み込んだことを想像すると感無量になります。

熊本城につながる街道沿いに、武蔵塚公園という墓地があります。そこには、鎧や甲冑を身に付けた武蔵が、立ったまま埋葬されています。没後372年が経過した今でも、武蔵は細川藩を見守っているのです。

(福祉心理学科 岩本勇)

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