ストーブの付け忘れ注意 | 静岡福祉大学

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  ストーブの付け忘れ注意

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 我が家のストーブには「付け忘れ注意」とテープが貼ってある。…何か変だ。

 

 これでは「付けることを忘れる」(Aタイプ)と誤解されてしまう。

 「消し忘れ」と言うべきところだ。何でこんなことに。

 

 考えてみると、「置き忘れ」と言うではないか。

 その意味は、「置いたまま忘れてしまう」(Bタイプ)だから、「付け忘れ」も、「付けたまま忘れてしまう」と解釈してもいいのではないか。

 

 「ストーブの消し忘れ」と言うべき場面で、「ストーブの付け忘れ」と言ってもいいのか、という問題である。

 

 「消し忘れ」という表現の方は、「消すことを忘れる」(Aタイプ)という意味で、「宿題の出し忘れ」「洗濯物の干し忘れ」、また、「名札の付け忘れ」のようにいくらでも作ることができる。(「出し渋る」「言いもらす」も「出すことを~」「言うことを~」(Aタイプ)の意味で同類。)

 しかし、「置き忘れ」の方は、「~したが、そのことを忘れる」(Bタイプ)という意味で、特異である。

 同類の例として見つかるのは、「おれを見忘れたか」「年を取ると、聞き忘れが多い」くらいで、表現が固定的である。

 

 「都にて聞き忘れにし波の音」と古く鎌倉時代歌集にある。古典ではBタイプの意味は普通だった。

 「見覚え」「聞き覚え」という対になる表現もあるので、「見る」「聞く」についてはBタイプの「~したこと」の意味が現代に生き残ったのであろう。

 

 このようなわけで、勝手に「ストーブの付け忘れ」と言うことは許されない。 

 ところで、「置く」については、なぜ「傘の置き忘れ」(Bタイプ)のように言えるのだろうか。…宿題にしておく。

 

 子ども学科 久島 茂

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