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Agingとは:「加齢」と「老化」

教員ブログ

 年をとるにつれて,心身にさまざまな変化が起こってきます。心理学的には,たとえば,認知機能の変化が考えられます。この変化のことを心理学ではもっぱら「加齢」とよんでいます。英語のagingの訳語です。

 しかしながら,日常生活では上記の加齢よりもむしろ「老化」という言葉のほうが頻繁に耳にします。加齢とおなじように老化も英語のagingの訳語です。ただし,この老化という訳語には,生物学的なネガティブなニュアンスが含まれます。たとえば,老化現象によって老眼になる,耳が遠くなるなどが挙げられます。

 このように英語のagingの訳語には,心理学的な変化の「加齢」と生物学的にネガティブなニュアンスを含む「老化」の2つの日本語があります。

 これとおなじように,「高齢者」のよびかたとして,「老人」もあります。そもそも,老人の「老」は,杖をついて腰の曲がった姿をあらわす象形文字です。ネガティブな意味合いがあることから,「老人」よりも「高齢者」という言葉の方が多く用いられています。

 心理学的には,加齢に関しては,「個人間」および「個人内」の加齢の影響の差異があるということも注意が必要です。「個人間」と「個人内」では大きく異なります。

 前者の「個人間」の差異とは,個人個人によって加齢の影響が異なっているということです。たとえば,加齢によって,認知機能の低下がない人もいれば,低下する人もいるということです。いわゆる個人差です。

 後者の「個人内」の差異というのは,ひとりの人間のなかで心理学的側面の違いによって加齢の影響が一様ではないということです。たとえば,記憶のある側面は,維持されています。しかし,記憶の異なる側面は,加齢の影響によって記憶が低下することが考えられます。たとえば,長期記憶は比較的維持されているが,短期記憶は低下するなどが挙げられます。

 このように,高齢期では心理学的に個人個人(個人差)によって,さらには個人のなかでも加齢の影響が大きく異なる場合があることも理解しておくが重要であると考えます。

 

福祉心理学科 石原 治